【こだわる】の意味を辞書でひくと、
1 ちょっとしたことを必要以上に気にする。気持ちがとらわれる。拘泥(こうでい)する。
・「些細(ささい)なミスに―・る」「形式に―・る」
2 つかえたりひっかかったりする。
・「それ程―・らずに、するすると私の咽喉を滑り越したものだろうか」〈漱石・硝子戸の
中〉
3 難癖をつける。けちをつける。
・「郡司師高―・って埒(らち)明けず」〈浄・娥歌かるた〉
と書いてある。あまり良い意味ではない。
にもかかわらず、巷で、特に飲食店の看板・チラシなどを見ると、ほとんどどこの店も【こだわり】という表現を使っているのが普通なんで、首をかしげてしまう。
うちの近所の飲食店オープン時のチラシにはその一枚の中に【こだわり】が8回も繰り返されていた。あまりこの言葉を多用されるとかえってうさんくさく、鬱陶しい気持ちになって、退いてしまうのは、私だけか?
また、いわゆるタウン情報の飲食店紹介記事の中に、何度も繰り返し【こだわり】が出てくる。とても便利な言葉として、ひとことそう書いておけば、そこの店主も納得してくれるのであろう。
うちへのマスコミ取材のときも、レポーターさんがにこやかに 「本当にこだわっていらっしゃるんですね!」 ときいて来るもんだから、間を空けず 「全くこだわっていません。常に新しい風をいれるよう努力しています。」 と答えるんですが、きょとんとされることが多い。そのあとの記事には案の定【こだわり】という言葉を使ったタイトルで自店が紹介されているので、ちょっと悲しい気持ちになる。
何か、もっと文学的な気品のある表現で、自店の紹介はしてもらいたいものである。
こんな小うるさいことばかり書いていると、マスコミさんにも敬遠されがちではあるが。
by マスター